2011.10.24更新

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先天性心疾患・構造異常 / 心電図異常・不整脈 / 心筋炎 / 肥大型心筋症
希少疾患 / 症候群と心筋疾患 / 拡張型心筋症・拘束型心筋症

心電図異常・不整脈

座長:城戸佐知子(兵庫県立こども病院 循環器科)


左側胸部誘導のST低下から“左室心筋の構造異常と機能障害”が発見された6歳男児例

  東京医科歯科大学 小児科 山口洋平、倉信大、石井卓、細川奨、佐々木章人、西山光則、土井庄三郎
  草加市立病院 小児科 土屋史郎

【症例】小学1年生の学校心臓検診で心電図異常(V5-6のST低下)を初めて指摘された。近医での心エコーで左室の拡大と左室後壁の運動低下を指摘され、心筋疾患疑いで当科入院となった。
【経過】心エコーと心臓カテーテル検査で左室後壁から側壁にかけての壁運動低下と、Tl+MIBG心筋シンチで同部位心筋viabilityの障害を認めた。右室心筋生検では中等度の非特異的な心筋変性を示唆する病理所見を認め、壁運動が正常と思われる部位でも心筋障害が存在することが示された。心臓カテーテル検査の結果から、器質的冠動脈疾患は否定された。
【考察】鑑別疾患として、拡張型心筋症、心アミロイドーシス、心サルコイドーシス、慢性心筋炎、左室憩室・心室瘤などを考えた。鑑別診断のポイントを文献的に考察した。
【結語】学校心臓検診を契機に発見された、稀有な心筋症の症例を経験した。心筋疾患のスクリーニングとして、学校心臓検診の有用性を改めて痛感した。



Vasospastic angina に伴う心室細動の経過観察中、心筋肥厚が顕性化した肥大型心筋症の1例

  日本大学医学部 小児科学系小児科学分野 春日悠岐、住友直方、阿部百合子、市川理恵、福原淳示、松村昌治、宮下理夫、金丸浩、鮎沢衛、岡田知雄、麦島秀雄

【症例】20歳男性。13歳時、マラソン中に意識消失し救急車内の心電図で心室細動を認めた。除細動後、前医に救急搬送され回復した。回復後の運動負荷でST低下を認め、冠動脈造影では狭窄は認めず、アセチルコリン負荷で左右冠動脈攣縮が誘発された。転院後の運動負荷では、Ⅱ、Ⅲ、aVf、V4、V5、V6のST低下を認めた。心エコーでは心尖部心筋の軽度肥大、心尖部穿通枝内の乱流など心筋症を疑わせる所見だった。運動負荷心筋SPECTで虚血は認めなかった。Ca拮抗剤の投与下で電気生理学的検査を施行し、右室心尖部と流出路から期外刺激を行なったが不整脈は誘発されなかった。pilsicainide投与でST変化はみられなかった。7年の経過中、左室全周性に心基部から心尖部まで徐々に心筋肥厚が進行し肥大型心筋症と診断した。
【結語】心室細動は虚血性変化または心筋症に伴うものと考えられ、心筋症の経過を観察する上で示唆に富む症例であった。



当初劇症型心筋炎を疑われたが、心房頻拍 (AT) が持続し補助循環下にアブレーション治療を行い軽快した頻拍誘発性心筋症 (Tachycardia Induced Cardiomyopathy; TIC)の1例

  静岡県立こども病院 循環器科 戸田孝子、加藤温子、浅沼賀洋、伊吹圭二郎、宮越千智、芳本潤、金成海、満下紀恵、新居正基、小野安生
  同 循環器集中治療科 濱本奈央、大崎真樹

12歳女児。2日前から発熱、嘔吐あり、前日より呼吸苦が出現し、前医入院。心エコーで左室壁運動の著明な低下、血液検査で心筋逸脱酵素の上昇を認め、劇症型心筋炎を疑われ当院に搬送され、補助循環を導入した。入院後、ATが断続的に続き、抗不整脈薬(アミオダロン)を投与したがコントロールできず、心機能も改善しなかった。6年前の学校心電図を取り寄せ、ATを認めていたことよりTICを疑った。補助循環下にATに対してアブレーションを施行したが、起源が複数個所あり頻拍停止には至らなかった。後日、房室結節に対するアブレーション・ペースメーカー植え込み術を行ったところ、術後速やかに心機能の改善を認め、翌日に補助循環を離脱できた。なお、心筋生検では炎症細胞浸潤はなく、慢性心筋障害の所見を認めた。
まとめ 急激な心不全症状を呈したTICの1例を経験した。原因不明の心機能低下例では本症も念頭に置き、心電図を注意深く解析することが必要である。



胎児期に徐脈、VSDでフォロー中に心筋緻密化障害様変化を認めたQT延長症候群の一例

  兵庫県立こども病院 循環器科 亀井直哉、佐藤有美、川﨑英史、古賀千穂、小川禎治、富永健太、田中敏克、城戸佐知子

【はじめに】最近QT延長症候群を伴う緻密化障害様変化の報告が散見されるが、その発症機序については未だ不明である。
【症例】在胎26週時に徐脈とVSDを認めていたが壁運動は良好であった。在胎27週時に両心室の壁肥厚と壁運動低下を認め、心室壁所見からは心筋緻密化障害が疑われた。その後左室の壁運動低下が目立つようになり、左心系の発育不良を認めた。出生時のエコーでは僧帽弁低形成、大動脈弁低形成、大動脈弁下狭窄を認め、両心室壁運動は胎児期よりは改善していたが不良であった。HRは100前後でQTc600msecと延長を認めた。新生児期に2:1房室ブロックを繰り返したためペースメーカー植込術を施行した。遺伝子検査ではLQT1,2,3に変異は認めなかった。心筋生検では心内膜に著明な線維性肥厚を認めた。
【まとめ】本症例では、徐脈が先行してから緻密化障害様変化が急速に出現しており、本疾患の発症機序を考える上で興味深い症例である。

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