2011.10.24更新

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先天性心疾患・構造異常 / 心電図異常・不整脈 / 心筋炎 / 肥大型心筋症
希少疾患 / 症候群と心筋疾患 / 拡張型心筋症・拘束型心筋症

先天性心疾患・構造異常

座長:三浦大(東京都立小児総合医療センター 循環器科)


左右冠動脈低形成により広範な心筋梗塞を合併した7歳女児例

  榊原記念病院 小児科 石井卓、上田知実、佐藤潤一郎、水上愛弓、稲毛章郎、嘉川忠博、朴仁三

【諸言】冠動脈低形成は稀な疾患であるが心筋梗塞・突然死を招く可能性があり慎重な管理を要する。
【症例】7歳、女児
【経過】生後、大動脈縮窄複合の診断で日齢13にsubclavian flap+PA bandingを施行し、生後6ヶ月にVSDのpatch閉鎖を施行。術前の造影では右冠動脈の高位起始を認めたが、心筋虚血を疑う所見はなく経過観察。4歳時に心電図変化を伴う失神・痙攣を認め、精査により左右冠動脈の低形成、左室心尖部を中心とした広範な心筋梗塞巣を確認。5歳時、外科治療のsecond opinion目的で当科を受診。局所的な狭窄は認めないことから手術適応はないと判断し、β遮断薬・ACE阻害薬・ARBの3剤併用による心不全治療を開始。6歳時に胃腸炎を契機とした右冠動脈領域の心筋梗塞を合併したが保存的治療で寛解。その後も感冒に伴う心不全の増悪を反復しているが、致死性不整脈はみられておらず現在は心臓移植を検討中。
【まとめ】冠動脈形成異常では心筋梗塞・致死性不整脈を考慮に入れた慎重な経過観察が必要である。



生後より左室壁の非薄化が認められた完全大血管転換の1例

  埼玉県立小児医療センター 循環器科 齋藤千徳、森琢磨、菅本健司、菱谷隆、星野健司、小川潔
  同 心臓血管外科 保科俊之、阿部貴行、黄義浩、野村耕司

生後より左室壁の非薄化がみられた完全大血管転換の1例を経験したので報告する。在胎週数38週4日、体重2716gで出生。出生後チアノーゼを認め当科児搬送となった。心臓超音波検査にて、完全大血管転換、心房中隔欠損、動脈管開存と診断、プロスタグランジンE1の投与を行った。心室中隔壁厚は2.5mm、左室後壁厚は2.0mmと左室壁は薄く心筋病変の合併が疑われたが、左室壁運動に異常は認められなかった。生後2週間前後での動脈スイッチ術の予定としたが、日齢10に施行した心臓超音波検査でも心室中隔壁厚は2.5~3.0mm、左室後壁厚は2.0~2.1mmと左室壁は薄く、動脈スイッチはリスクが高いと判断しひとまず延期とした。日齢18に再検したところ心室中隔壁厚は2.5~3.0mm、左室後壁厚は2.3~2.4mmと左室壁は厚くなる傾向がみられるため、動脈スイッチ術を行うこととした。文献学的考察を含め報告する。



心肺停止で搬送され心臓腫瘍と診断された1例

  東京都立小児総合医療センター 循環器科 波多野恵、福島直哉、横山昌一郎、齋藤美香、玉目琢也、大木寛生、渋谷和彦、三浦大

【はじめに】小児では、致死的不整脈の原因になった心臓腫瘍の報告は少ない。今回、心肺停止蘇生後に心臓腫瘍が発見された症例を経験した。
【症例】生来健康な1歳男児。けいれんから心肺停止をきたし、救急隊により心室細動に対する電気的除細動など蘇生術が行われた。約20分後に自己心拍再開し、当院に搬送された。脳低体温療法など集中治療を行い、神経学的後遺症なく回復した。アミオダロン投与後、散発性の心室期外収縮と短時間のけいれんがあったが、心室頻拍・細動は認めていない。入院時の心エコー検査で、心室中隔が著明に肥厚し心臓腫瘍が疑われた。MRI検査では、心室中隔に境界が明瞭な2×3cm大の造影効果のある腫瘤を認め、線維腫の可能性が高いと考えている。
【考察】本症例では、心室中隔の腫瘍が心肺停止の原因と考え、摘出術を予定している。心臓の線維腫の致死的不整脈との関連、手術適応につき、文献的考察を加えて報告する。



興味深いMRI所見を呈した心尖部肥大型心筋症の女児例 ―左室心筋緻密化障害との鑑別を含めて―

  筑波大学付属病院 小児科 中村昭宏、堀米仁志、加藤愛章、林立申、高橋実穂、須磨崎亮
  筑波大学付属病院 放射線科 南学

【背景】心尖部病変を伴う心筋疾患には心尖部肥大型心筋症、左室心筋緻密化障害、心室憩室などがあり、その鑑別は必ずしも容易でないが、治療方針決定に際して診断が重要である。
【症例】生来健康な6歳女児。学校検診心電図にてV4-V6誘導の陰性T波を指摘されて当院受診。心エコーにて心尖部心筋肥厚を指摘された。シネMRI検査(balanced TFE法)では心尖部にT2でhighの内腔様に見える肥大部位があり、一見、真の左室腔から血液が流入するような像が得られたが、心カテーテル時の左室造影では左室腔と心尖部の交通は全くなく、MRI所見は心尖部心筋の変性壊死を見ている可能性があった。他の部位の左室心筋に肥大はなかったが、心尖部の内部に肉柱形成に類似した所見がみられた。冠動脈に異常はなかった。運動制限なし、無投薬で経過をみているが、その後20年間無症状で不整脈もない。
【結語】心尖部病変を伴う心筋疾患の鑑別は、心エコー、心臓MRI、核医学検査、心カテーテルを組合せて総合的に行う必要があると考えられた。

日本小児心筋疾患学会事務局

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