2011.9.30更新
『ランチョンセミナー』 12:00~13:00
座長:富山大学小児科 市田蕗子教授
共催 アボット ジャパン株式会社
講演:東京医科歯科大学
難治疾患研究所・分子病態分野 木村彰方教授
タイトル:「心筋症:遺伝子異常からみた分子病態」
原因不明の心筋機能異常に基づく疾患として定義されていた特発性心筋症は、肥大型心筋症(HCM)、拡張型心筋症(DCM)などの臨床病型に分類される。近年の研究によりHCMやDCMの病因が遺伝子異常であることが判明しているが、これまでに明らかになった原因遺伝子はHCMで約20種、DCMで30種類であり、それぞれの原因遺伝子に複数の病因変異が報告されている。我々はわが国のHCMおよびDCMについて遺伝子解析を実施しているが、明らかな家族歴を認める家族性HCMの約55%、家族性DCMの約21%に病因変異が見出される。このことは、これらの心筋症が遺伝的に不均一であり、さらに未知の心筋症原因遺伝子が存在することを示す。心筋症の原因遺伝子はきわめて多岐に渡るが、心筋収縮要素、Z帯要素、I帯要素、筋膜要素、筋小胞要素、核膜要素などの心筋細胞の機能発現や機能維持に関わる要素をコードする。病因変異による機能異常は、筋収縮のCa感受性制御異常、ストレッチ反応異常、代謝ストレス反応異常などに分類されるが、HCM型変異とDCM型変異では機能変化の様態が異なる。本セミナーでは、心筋症の病因変異とそれに起因する機能異常に基づく病態形成機構について、最近の知見を紹介する。