2011.10.24更新

シンポジウム : 「小児心臓移植をめぐって」 15:30~16:50

座長 : 白石裕比湖 第20回日本小児心筋疾患学会 会長
       福嶌教偉 大阪大学重症臓器不全治療学 教授

  1. 静岡県立こども病院 循環器科 部長 小野安生先生
    タイトル 「心臓移植適応基準」

     心臓移植の適応基準に関しては、これまで日本循環器学会(日循)において成人を中心とした心臓移植の適応基準が定められ、その基準に従い日循の心臓移植適応検討小委員会が申請書類を審査している。その審査で適応と判定された場合に臓器移植ネットワークの待機リストに登録することができる。この間小児循環器学会(小循)臓器移植委員会では、成人との相違を小児の基準として盛り込むために検討を重ね、2011年No3の小循雑誌に掲載した。また、日循の申請書類も小児用(10歳以下)として完備された。これらについての概説を行う。

  2. 大阪大学大学院医学系研究科 小児科 小垣滋豊先生
    タイトル「小児心臓移植後の管理」

     日本においても海外渡航移植・国内移植を含め小児の心臓移植後患者が少しずつであるが着実に増えている。小児心臓移植後の急性期および慢性期における免疫抑制と拒絶反応の管理、起こりうる重要な合併症の管理について、その要点を概説し、小児循環器医の役割を考える。
     移植後の管理は、移植を受けた小児をとり巻く環境や生活習慣、成長発達段階などにも影響を受けるため、子どもに応じた個々の対応も必要であり、日本人小児心臓移植後患者の予後が世界的にも良好であることにつながっていると思われる。今後日本人小児の心臓移植症例が蓄積されるに伴い日本における移植後管理の体系を確立していく必要がある。

  3. 全国心臓病の子どもを守る会 栃木県支部 菅又雅章先生
    タイトル「小児心臓移植を受けた家族の立場から」

     私の息子は、15年前、拡張型心筋症と診断されました。その子が3歳になったとき、アメリカで心臓移植を受けることになりました。この小児心臓移植をめぐって、本人はもちろんのこと、家族としても大変大きな苦労がありました。現在、高校2年生となった息子がこれまで歩んできた道のりについて、家族の立場からお話させていただきたいと思います。

  4. 埼玉医科大学国際医療センター 心臓病センター・難治性心不全治療部 土屋美代子先生
    タイトル「小児心臓移植におけるレシピエント移植コーディネーターの関わりとその実際」

     小児心臓移植におけるレシピエント移植コーディネーターは、心臓移植の適応評価時から移植後遠隔期に至るまで、長期間にわたり患者(レシピエント)や家族と関わりを持つ。患者自身がきちんと心臓移植に対し理解し、自己管理や治療に参加していけるよう、年齢に応じて説明・指導しておく事は重要である。
     患者や家族が自己判断で行動することがないよう、緊急時はもちろん、不安な事や心配な事がある場合や、すぐに連絡が取れるよう、レシピエント移植コーディネーターが24時間体制でタイムリーに対応、状況に応じて医師に指示を仰ぎサポートしている。しかしながら、思春期は反抗期ともなる時期であり、そのために内服薬の服用等がおろそかになったりする事がある。
     以上のように、小児心臓移植において、移植前から移植後遠隔期に至るまで一貫して関わる事は重要であり、レシピエント移植コーディネーターの関わりは不可欠である。

  5. 大阪大学重症臓器不全治療学 教授 福嶌教偉先生
    タイトル「わが国における小児心臓移植の現状と課題」

     欧米において小児心臓移植は、末期的心不全の外科的治療として定着している。しかし、わが国では改正移植法が2010年7月17日に施行されにも拘らず、10歳以上の心臓移植は行われるようになったが、1年弱経過した現在も10歳未満の心臓移植は、2000年に成人女性ドナーから行われた1件に過ぎない。
     一方、我が国の全国調査によると、小児心臓移植適応例は毎年50例(10歳未満は30例)現われており、小さな小児については、未だに海外渡航移植が後を絶たない現状である。
     海外の心臓移植の現状を紹介するとともに、わが国の小児心臓移植の現状と課題について述べる。

日本小児心筋疾患学会事務局

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